満願、その他
いわゆる'' 奇妙な味''の作品が詰まっていて、
読んでて楽しかった。(パノス・カルジネスとか初めて知ったし)
泡坂妻夫の「椛山訪雪図」 が好きだってどこかで書いてらして、
う〜ん、趣味が合うかもと思ったのですが、
なんとなく手を出しかねてまして・・・。
(「椛山訪雪図」はこちらの所収。ほれぼれするような短篇集です)
いわゆる青春ミステリの人と思ってたのです。
(いや別に青春ミステリが悪いわけじゃないんですが)
で、今度、短篇集「満願」で初めて作品を読みました。
完成度高い・・・。食わず嫌いで損してた。
特に後半の三作がよいかな。
〈裏プロジェクトX〉とも言うべき「万灯」(しかしエネルギッシュな犯人だ)、
「関守」では、峠にぽつんと立つ寂れたドライブインのおばあさんが語る
白昼夢のような物語にひきこまれ、(個人的に峠の茶屋の怖い話ってテーマが
結構好きで、自分でも書いてみようとして失敗してるのですが、
水滸伝・十字坡の孫さんの店や落語の鰍沢とか結構テンション上がる)
そして法学生の切ない片恋を静かな筆致で描いた(はずの)「満願」。
背負い投げを食わされ、最後に残る苦味みたいなもの。
冒頭の「夜警」 もそうだけど、
どこかにチェスタトン=泡坂テイストが感じられるのも嬉しいかも。
丁寧に作りこまれた万華鏡みたいな作品集。
(やっぱり他の長篇とかも読んでみようかな)